隣接しながら相反する二つの神社 2/2

鳥居 神社

前回までの話はこちら

意味不明だったが、

気付かれたら危険だと感じて・・・

 

そうしたら男が黙々としている作業が

なにやら禍々しく思えて・・・

 

※禍々しい(まがまがしい)

悪いことが起こりそうな予感をさせる。縁起が悪い。不吉である。

 

逃げ場を失い、

どうしたものかと思案した時、

 

ストンと、あの屋敷の夢に入った。

 

友達にその話しを全てした。

 

友達はいつになく静かな声で、

「普通の夢や無いよね」と呟いた。

 

「ごめん・・・こんな話して」

 

「いや、いいねんけどな・・・うん。

 

この電話取った時にな、

なんかが突然首に巻き付いたと思ったんよ。

 

あんたな・・・

その女の身代わりにされかけてん

 

友達が話し始めた。

 

霊団のような悪霊の巣の様な空間があって、

そこのモノに目をつけられた、というのだ。

 

目をつけたのは、

 

延々とその空間で残忍に殺されるばかりを

繰り返している女で、

 

私を身代わりにと目をつけたというのだ。

 

そして身代わりにしようとして

夢で引っ張り込んだら、

 

他のモノにも気付かれて標的にされていると・・・

 

「どこでこんなモノ拾ってきたん?

 

もうなんか・・・人の形してないやん・・・

なにこれ?」

 

心当たりは一つしかない。

 

Y神社だ。

 

友達はY神社の話しを聞いて、

「すごい臭いな」と呟いた。

 

「イチョウの木があるのかな、

とか思ってるんやけど」

 

「いいや・・これ・・・・・・

死体の腐った臭いやろ」

 

友達は断言した。

 

「・・・・・たぶん、

あんたそこで目つけられたな。

 

なんでヤバイって分かってて、

そこの道とおるんさ!?」

 

「朝やから・・・

かまわんと思って・・・」

 

「気つけや。しつこいで。

面白くて楽しくて殺しするような連中やで」

 

震えは治まったけれど、

気配はまだ近くにあるのは分かった。

 

笑いながら私の怯える様子を見ている。

 

「笑い声が聞こえるし。

ほんまに気つけや!?」

 

心霊現象として終わるとは限らないと、

ひしひしと感じた。

 

例えば、

今から一人で夜道を歩けば通り魔に会う。

 

殺される。

 

そう感じていた。

 

精神的に囚われていたんだと思う。

 

煙草を吸うにも、

室内禁煙でベランダが無い部屋なので、

 

携帯灰皿を持って

玄関外で吸っていたのだが、

 

外に出るのが怖くて仕方が無かった。

 

帰宅後、禁煙が数日続いた。

 

外という世界に触れた時に、

連中のゲームが始まりそうで・・・

 

殺される。

 

本気でそう思った。

 

でも、社会人。

 

そんな理由で休むわけにもいくまい。

 

稼がねば生活が出来ない。

 

翌朝、

怯えながらも出社した。

 

仕事をしていると、

いつも通りのペースが戻ってくる。

 

昼休みに一人でK神社にお参りをした。

 

時々お参りをしては「応援してください」と、

お願いをしていた。

 

「その日はこんな事がありました」

「怖いことが起きませんように」

「負けませんように」

 

と、お願いをしていた。

 

少しだけ泣きながら。

 

もうY神社ルートは通らないようにして、

K神社ルートで大回りして行き帰り歩いた。

 

そんな折に会社の上司と世間話をしていた時、

部長の話を聞いた。

 

部長はかなり霊感が強いらしく、

私の上司は時々その話を聞かされているようで。

 

「隣のY神社さ、

ヤバイって言うんだよね~。

 

君、そういうの分かる?」

 

「ああ・・・はい・・・・・

まじヤバイので参拝はお勧めしません。

 

敷地に入るのもお勧めしません。

 

K神社はお勧めです。

とても良い神社です」

 

という話をした。

 

その上司は本当に良い人で、

 

心霊系統は信じていないけれど、

否定まではせず話しを聞いてくれた。

 

もう年末も近くなって、

会社を出る時間には日も暮れていたが、

 

K神社のルートを通ったら

全く怖くなかった。

 

とても空気が澄んでいて、

気持ちが良いくらいだった。

 

出来るだけY神社から意識を逸らして、

出来る限り昼休みにK神社へ通っていたら、

 

救いの神がやって来た。

 

私があの日に電話した友達から連絡があり、

地元へ戻れるようにしてくれたというのだ。

 

(当時は家庭の事情で色々あったので)

 

友達が自分の母に私の話をしたらしく、

友達よりも霊感の強いおばさんは、

 

「あの子・・・

このまま東京におったら・・・死ぬな」

 

と言ったらしい。

 

もう、ほぼ強引に、

 

私が自分の意思で戻れるようにと

動いてもらって、

 

私の東京生活は終わることになった。

 

話を聞いた一週間後には、

私は新幹線に乗っていた。

 

新幹線の中で京都に入った時に、

空気が変わったのが分かった。

 

そこで初めて、

 

「東は私には合わなかったのか・・・」

 

と感じた。

 

Y神社の連中も京都に差し掛かった途端、

気配が無くなった。

 

体から緊張が消えていった。

 

地元に帰ってきて、

友達の家にお邪魔した時は散々言われた。

 

「このままやったら死んでしまうからって、

もう急いだよ~」

 

と、おばさんは笑いながら・・・

 

「死ぬって?」

 

「まぁ、大病するか自殺か」

 

友達はあっさり言ってくれた。

 

今振り返ってみたら、

 

不安な気持ちが現象を増長させて

より恐ろしく感じていたんだろうし、

 

隙も大きかったのだろうと思う。

 

けれど、

Y神社は本当にヤバイ。

 

シャレにならんという思いは今でもある。

 

この話の出来事から数年が過ぎて、

やっと人に話せるかなと判断した。

 

そして、最初に書くべきだったが・・・

 

感覚の鋭い人(特に東の方)

もし悪影響が出てしまったら申し訳ない。

 

(終)

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