私の田舎に伝わっている風習

墓地

 

つい先日、田舎へ帰った時に聞いた話が衝撃的でした。

 

うちの田舎ではお墓参りの後に『お墓から提灯に火を点けて本家に徒歩で帰る』という風習のようなものがあります。

 

それだけだったらありがちなのですが、それには色々と制約がありまして・・・。

 

① 提灯の火を消してはいけない。消えた場合はすぐにお墓へ戻って火を点け直す。

 

② 走ってはいけない。

 

③ 提灯を持つのはその場にいる最年少者。(但し、赤ん坊のように自分で持てない場合はその次の年齢の者)

 

④ 絶対にお社(やしろ)を見てはならない。

 

この4番目のお社というのは、本家からお墓までの間のほとんど田んぼしかない道の道中に不自然に小さい林のような場所がぽつんとありまして、その中に石造りの小さなお社があります。

 

そのお社の”方向”を見てはいけない、というものです。

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お社にいる”アレ”を見てしまうと

子供の時は私も提灯を持つ役をしたことがありましたが、その時も祖父や祖母に約束を守るようにと厳命されました。

 

その時に聞かされたのが、「提灯の火に御先祖様が乗り移って家の仏壇に入るから途中で消してはいけないよ」という内容で、子供ながらに「なんか変なの」と思ってその役をやっていました。

 

そしてその提灯持ちの最中、お社の付近に差し掛かると、母親が私の目を隠してきたのを覚えています。

 

当時の私は母親のおふざけだと思い、無邪気にきゃっきゃっとはしゃいでいました。

 

そしてお社を通り過ぎるまではその状態が続き、母親が手を外すとそのまましばらく歩き、家に到着。

 

仏壇のロウソクに火を移して終了、という風習でした。

 

当時はなんとも思っていなかったこの風習なのですが、今年になり何年か振りに田舎に帰り、祖母にその風習について訊く機会がありました。

 

「そういやYちゃん(私)にはちゃんと話してなかったね」と、あの提灯持ちのルールの真意を聞いて正直驚きました。

 

① 提灯の火を消してはいけない。消えた場合はすぐにお墓へ戻って火を点け直す。

 

これは昔に聞いた通り、御先祖様を家に連れて帰るための依り代のようなもの。火が消えると連れていけない。

 

※依り代(よりしろ)

神霊が依り憑く(よりつく)対象物のこと。

 

② 走ってはいけない。

 

走ると”アレ”に見つかりやすくなるため。

 

③ 提灯を持つのはその場にいる最年少者。

 

“アレ”は弱い者を狙うので、御先祖様の守護が確実に届く位置、要は提灯の持ち手が一番近い。

 

④ 絶対にお社を見てはならない。

 

直接”アレ”を見てしまうと、御先祖様の守護も効かない。

 

祖母は説明している時に『アレ』という言葉を多様したが、私は意味が分からなかった。

 

私は「アレって何?」と訊くと、祖母は「アレはほら、お社の中にいるアレだよ」と。

 

話しを詳しく聞くと、アレというのは田んぼの真ん中にある林のお社の中にいるモノで、足の長い猿のような外見をしており、大昔からそこにいる存在で、普段は静かにしているらしいがお盆の季節になると害をなすモノになるらしい。

 

名前もあるらしいがそれを口にするのはタブーらしく、「知らない方がいい」と教えてくれませんでした。

 

この存在は子供には教えないらしい。

 

興味が出ると「見えてしまう」からだそうだ。

 

今思えばあの日、母親が私の目を隠したのもそういう都合があったからなんだなあと感謝したものです。

 

祖母は続けて、この風習というより儀式が失敗した場合の事を教えてくれました。

 

過去には途中で火が消えたまま本家に帰ったり、アレを見てしまったりと失敗があったらしいのですが、その時は次のお盆までに必ず一族の誰かが不可解な事故や事件で亡くなっているそうです。

 

私はそこで「急に話しが胡散臭くなったなあ・・・」と思っていると、「去年亡くなったFはアレにやられたんよ」と祖母は言いました。

 

そこで、私はものすごく鳥肌が立ちました。

 

去年の年末、私の従兄弟にあたるF君が車の事故で亡くなりました。

 

子供の頃よく遊んだので、とても悲しかった。

 

母親から聞いた話だと、直線の見晴らしのいい道路で急にハンドルをきり、横の川に転落し亡くなったそうです。

 

何故そんな場所でハンドルをきったのか、原因は未だ不明らしい。

 

私が何年か振りに田舎に帰ってきたのも、F君にお線香をあげなきゃと思ってのことでした。

 

「じゃあ、去年の夏に失敗したの?あの提灯のやつ」と訊くと、「去年はUちゃん(親戚の子供)が提灯持ちをやったんだけどねぇ、どうやらアレを見ちゃったみたいでな。ものすごく怯えておったんよ」と。

 

その後、大慌てで御祓いをしてもらったりしたらしいが、結局はダメだったらしい。

 

昔に何とも思わずに参加していたものに重大な意味があると知った時、私はとても恐怖を覚えました。

 

私が田舎へ帰った時にはその儀式はすでに終わっており、お墓参りだけしてきました。

 

今年のその儀式はきちんと成功したのか、一年間不安で仕方ありません。

 

来年は参加してきちんと見守りたいと思います。

 

(終)

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