カーテン越しに映る女の影

場所は三重県の某ホテル。

中学の修学旅行での話です。

 

未だに俺らの間では、

酒の席でやたら語られる話です。

 

部屋の間取りですが、

 

玄関を入って右に便所、

左に風呂、襖を挟んで和室。

 

ガラスの引き戸を挟んで

板の間があり、窓でした。

 

ちなみにそこは三階で、

 

窓からの景色は

 

中庭の木々が見えるだけ

という感じでした。

 

夜、消灯時間が

近づいて来た頃でした。

 

先生が「お前ら、早よ寝ぇよ!」と、

玄関から入って来ました。

 

続けて、「おい、お前らアレ見てみい」

と窓の方を指しました。

 

カーテンを閉めた窓に、

 

中庭の木々の影が

映っていたのですが・・・。

 

もう一つ、

 

中庭の照明に照らされた、

「女の人」にしか見えない影も

 

一緒に映ってました。

 

先生と俺らは、

 

「なんじゃアレ~!

気色悪る~!」

 

とか何とか言いながら、

 

とりあえずカーテンを

捲ってみたのですが、

 

もちろん窓の外には

木が生い茂っているだけです。

 

そしてカーテンを戻してみると、

またもや女の形の影が・・・。

 

「どの木がどう映ったら、

こんな形に映るんや?

 

ホンマ気持ち悪い」

 

と言いながら、

 

先生はカーテンを開けたり

閉めたりしています。

 

が、そのうち、

 

「もうええ、気にせんと早く寝ろ」

 

と言いながら、

電気を消して出て行きました。

 

俺らはもちろん気になりまくりで、

 

何回もカーテンを開閉しながら

検証してました。

 

でもそのうち飽きてきて、

 

「もうええやん、寝よーや」

 

と一人、また一人と

寝てしまいました。

 

俺も影には飽きて、

 

隣の布団のヤツと

エロ話なんかしながら、

 

時折気になって

チラチラ見るだけになりました。

 

2時間ほど経った頃でしょうか。

 

突然先生が、

 

「お前らまだ起きてんのか!」

 

と怒鳴って入って来ました。

 

しかし、続けて・・・

 

「今、動きよった・・・」

 

とポツリ。

 

「???」

 

俺らもとっさに

窓の方を見ました。

 

消えていました。

女の影。

 

すると先生が、

 

「今、平行移動で、

こう、スゥ~っと・・・」

 

俺らは死ぬほどビビッて、

 

しかし、なぜかとっさに

カーテンを開けに行きました。

 

窓の外には、

もちろん何もなし。

 

中庭の木々が

生い茂ってるだけです。

 

「これ・・・人間には無理やろ」

 

先生はマジです。

 

現実、女の影は消えてるし、

俺らも「マジですね・・・」と、

 

変に冷静を装いながら

寝てる奴らを叩き起こして、

 

それぞれ隣や向かいの部屋に

逃げました。

 

次の日はもちろん、

その話題でもちきり。

 

しかし、「今日の夜は見に行くわ」

とか女の子らに言われ、

 

俺らは内心

ニヤニヤしてました。

 

その日の夜、

 

俺らと女の子らと、

先生まで巻き込んで、

 

『女の影を見るツアー』

 

が開催されました。

 

そして、みんなの恐怖心と

野次馬根性の視線に囲まれ、

 

いざ引かれたカーテンには・・・

 

何も映っていませんでした。

 

(終)

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