ある日、忽然と消えた奥さん

夫婦

 

以前に派遣されていた会社での話。

 

派遣先の方に、「アレルギーとか体質って一晩で治るものなのか?」と聞かれたことがある。

 

私はアレルギー持ちなので、一晩でなることはあっても治ることはほとんどないと思う、と答えた。

 

その後、その方(Aさん)はうつ気味になっていき、先月ついに会社を辞めてしまった。

 

会社を辞める前に、「どうしたんですか?辞めちゃってどうするんですか?」と失礼ながら聞いた。

 

すると、Aさんは奥さんがいなくなったと言った。

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以下Aさんの話

ある日、Aさんが夜遅く会社から帰ると、部屋に奥さんが居なかった。

 

部屋も真っ暗で、誰も居ない様に見える。

 

トイレの電気も消えていたし、確認したが人は居なかった。

 

疲れて寝てしまったのか?と寝室を見ても居ないし、外出するという連絡もなかった。

 

狭いマンションで二人暮らしだから隠れる所はない。

 

リビングの電気を点けてテレビをつけると、トイレのドアが開く音がして奥さんが出てきた。

 

トイレには誰も居ないのを確認したはずなのに。

 

どこに行ってたの?と聞くと、どこにも行ってないという。

 

家に居た、トイレに行って出てきたらAさんが帰っていたという。

 

その日から、奥さんの様子がおかしい。

 

外見は変わっていないが、今までと何かが違う。

 

でも何が違うのか分からない。

 

3日ほど経ち、奥さんが料理をしているのをふと見た。

 

奥さんが玉ねぎを刻んでいる。

 

Aさんの記憶の奥さんは、玉ねぎ等のねぎ類を切る時、涙が出るのレベルではなく、顔が真っ赤に腫れあがってしまう体質だったという。

 

今までねぎ類、特に玉ねぎを切る時は、ゴーグルと三角巾を使って顔全体を覆い隠して切るか、Aさんを呼んで代わりに切ってもらっていたという。

 

でも今、目の前の奥さんは、玉ねぎを何もせずにみじん切りしている。

 

奥さんに玉ねぎ刻んで大丈夫なの?と聞くと、にこっと笑って作業に戻ったという。

 

何かが変な気がする・・・と気になり始めると、何もかもが疑わしく思えてくる。

 

しかし、疑っている自分がおかしい気もする。

 

そんな思いが巡って、気がおかしくなりそうな気がするという。

 

Aさんが会社を辞める1ヵ月ほど前、奥さんが居なくなったという。

 

その日の夜、先にお風呂入るねと言って脱衣所に行ったきり、忽然と居なくなった。

 

脱衣所と風呂場には窓もなく、天井に通気孔があるだけ。

 

玄関も窓も開いた形跡がない。

 

携帯に電話をしたが、居間に置き去りにされていた。

 

Aさんは慌てて奥さんの実家に電話をしたが、誰も出ない。

 

Aさんはパニックになり、何故か寝て目が覚めれば元通りかもと考え、布団に入ったらしい。

 

朝、目が覚めてもやっぱり奥さんは居ない。

 

奥さんの職場に連絡をしてみると、「そんな人は前からいません」と言われたという。

 

奥さんの実家に行ってみたが、前にも何度か行ったことがある場所なのに、そこには別の人が住んでいた。

 

もう3年ほど前からその場所に住んでいるという。

 

まるで奥さんは存在しなかったようになっていたという。

 

捜索願も出していたらしいが、結局は私が辞めるまでに見つかったという話は聞かなかった。

 

(終)

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One Response to “ある日、忽然と消えた奥さん”

  1. 匿名 より:

    怖いというより最愛の人を失った悲しみの方が大きいかも…

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