川原で拾った携帯が恐怖の始まり

『その携帯・・・ザァー・・どこ・・・

ザァ・・・僕は・・ザァ・・・ザァー・・にいる』

 

その一言が恐怖の始まりだった。

 

私は、川原の道端で携帯を拾った。

 

持ち主を調べようと思い、

携帯の中身を見る。

 

その携帯の中には、

画像や音楽や時計などの

機能が全くない。

 

不思議に思いつつも、

登録されている人物欄を見てみる。

 

【    】

 

上のような表記が一件あるだけだ。

そう、名前が書いてない空欄だけ。

 

少し不気味に思ったが、

そこを開こうとした。

 

その瞬間、

その携帯の電話が鳴った。

 

恐る恐る、電話に出てみる。

「もしもし」

『・・・』

無言だ。

 

「もしもし~あのぉ、この携・・・」

 

自分が言い終わる前に、

相手が喋った。

 

『その携帯・・・ザァー・・どこ・・・

ザァ・・・僕は・・ザァ・・・ザァー・・にいる』

 

ノイズが酷くて聞き取れない。

 

しかし、最初の『その携帯』と『にいる』、

これだけは聞き取れたので、

携帯の持ち主が自分の携帯に

電話をかけたのだと自分は思った。

 

「あのぉ、もしかして、

この携帯の持ち主ですか?」

 

『そう・・・ザァー・・・どこ・・・

ザァー・・・ザァー・・・僕は・・・くにいる』

 

「すいません、ノイズが酷くて

よく聞こえません」

 

『・・・』

 

相手の返答が無くなった。

と同時にノイズが無くなった。

 

「あ、ノイズ良くなりましたね。

あの、この携帯拾ったんですけど、

今どこにいま・・・」

 

そう言いかけた瞬間、

恐怖の瞬間が訪れた。

 

『ぼぼぉおくくぅぅうはぁああぁあああ

ああああああああ じじぃぃごごごぉぉ

ぉくくくぅぅににぃぃ!いぃぃぃいるうう

うううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!』

 

凄い叫び声で、ボイスがまるで

スローにしてる感じの声が聞こえた。

 

一瞬にして凍りついてしまった。

 

ハッ!と我に返った瞬間、

その携帯を川の方にブン投げた。

 

ヒュルヒュル~チャポン・・・

 

その携帯は宙を描くように、

して川に落ちた。

 

「ハァハァ、なんだったんだ・・・」

 

そう思いながら川の方を見ると、

さっき携帯を投げた所から、

男の顔が覗いたのだ。

 

正確にいうと、鼻から下が川の中で、

鼻から上が川から見える状態だった。

 

どんどんと顔が出てくる。

自分は恐ろしくて硬直してしまった。

 

その男の顔が、

口あたりまで出てきた時、

更に驚いた。

 

口が・・・

口全体が・・・。

 

自分はその後、

どうしたか覚えていません。

 

相手の口が覗いた時から、

記憶があやふやなのです。

 

記憶があるのは、自分が友達の家で

泣いているところからです。

 

でも、相手の口の辺りが見えた時に、

何か恐怖を感じたのは覚えています。

 

その後、あの川に近づいていません。

 

(終)

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