田舎村の風習 6/8

<ここから後日談>

 

ソンチョは一週間ほどで退院した。

 

「まだな、胸に糸が

縫われとるんよ。

 

見てみ、これが糸じゃ。

 

これ、しばらくしたら

抜きとるらしいぞ」

 

「この糸抜くんか?

それは痛いじゃろなぁ。

 

しかし、傷でかいなぁ。

 

ソンチョはサクッと

切ったんじゃな。

 

血ぃとかすごかっただろ?」

 

「自分でもようよう覚えとる。

 

包丁でザックリいったんじゃ、

あの時。

 

痛かったな~」

 

そりゃ自分で切ったんだから

覚えとるじゃろと、

 

その時はもう、

武勇伝というか笑い話。

 

ホントは2~3日で

退院できるぐらいの、

 

浅い傷だったそうだ。

 

でも頭おかしくなってる

かもしれんからと、

 

ソンチョの母親が心配して

入院させてたらしい。

 

入院というよりは、

様子見と言うべきだろう。

 

「ひどいかあちゃんじゃろ。

 

自分の子供に向かって、

頭おかしくなってるかもしれんて」

 

「さすが、ソンチョの

かあちゃんじゃ。

 

思ってもなかなかそんなこと

言えんぞ」

 

「病院はヒマで死にそうだったわ。

探険も出来んのじゃ。

 

歩きまわると、お医者様が

『傷口開くぞ』って脅すんよ」

 

「それは怖いな」

 

田んぼの排水溝で

ザリガニ釣りしながら、

 

そんな話をしていた。

 

久しぶりにソンチョと

遊べるもんだから、

 

嬉しくて嬉しくて。

 

「あとな、

あの神社のことだけど」

 

「なんかわかったの?」

 

「何もわからん。

 

ジジイだけじゃなくて

ババにも聞いたけど、

 

神社なんて知らんて。

 

とうちゃんとかあちゃんにも

聞いたけど、

 

やっぱりそんな神社

知らんて」

 

「ソンチョのジジババが

わかんないなら、

 

わかんないんだろなぁ。

 

神社の話、

どこまでしたん?」

 

「俺達があの神社に行ったことは

言うてないよ。

 

だから、友達から聞いたんじゃけど、

あの山に神社ってあんの?

 

って感じかな。

 

別になぁ、ジジイもババも

隠すそぶりとかしてないからなぁ。

 

危ないから探すなとも言わんし、

 

神社あるならお参り行かんとな

とかほざきよる。

 

ホンットに知らんようじゃ」

 

「俺のジジババは

もう死んどるからなぁ。

 

わからずじまいかなぁ」

 

「八方塞がりじゃ。

 

にっちもさっちもいかんことを、

八方塞がりと言うらしい」

 

「じゃ、今の俺達は

八方塞がりじゃ」

 

その日はソンチョの

退院翌日だったから、

 

大事をとって走り回る遊びは

しなかった。

 

でも、ソンチョが

我慢出来なくなって、

 

「木登りぐらいええじゃろ」

 

だったから、

 

公園に行ったのは

間違いだったかな。

 

「夏休みのうちに

退院できてよかったな」

 

「全然よくない。

 

プール入ったらダメなんじゃ。

プール入ったら死ぬって」

 

「そりゃそうじゃ。

 

胸がパカッといってしもて

るんじゃから」

 

その日はホントに楽しかった。

 

暗くなるまで遊びたかったが、

 

「かあちゃんが今日だけは

早く帰って来いって」と、

 

夕方早々に、

ソンチョとしぶしぶ帰路についた。

 

そしていつもの電柱の下で

バイバイした。

 

「じゃあ、また明日な。

明日はめいっぱい遊ぼな」

 

その日の晩、

 

俺は意外な人物から、

あの神社について聞くことになる。

 

とうちゃんの帰りが早かったから

夕ご飯を家族みんなで食べて、

 

その日はかあちゃんも酒を飲んで

ほろ酔いになっていた。

 

とうちゃんは早々に寝てしまい、

弟もみんな布団に入った頃だ。

 

茶の間には、

かあちゃんと俺の二人だ。

 

母ちゃんは自家製の

梅酒を飲みながら、

 

俺と一緒にテレビを観ていた。

 

俺母「なぁ、肩叩きしてよ」

 

「なんでじゃ。

 

俺、もうそんな子供と

違うじゃろ」

 

俺母「ええじゃろが。

かあちゃんも疲れとるんよ。

 

お願いします~」

 

「しゃあないな。

すっかり酔っ払いやんけ。

 

今日だけじゃ」

 

普段は頼まれても

絶対にしないが、

 

その日はソンチョと遊んで

気分が良かったから、

 

トントンとかあちゃんの肩を

叩いてやった。

 

本当に何気なく、

 

肩を叩きながら

かあちゃんに尋ねた。

 

「なぁなぁ、あの山に

神社ってあんのか?」

 

これでかあちゃんに聞くのは

二度目だった。

 

一度は知らないと言われたから、

別に期待もしていなかった。

 

俺母「山ん中にか?

 

そりゃ、ないじゃろ。

聞いたことないって。

 

ホントに神社なんて

あんのんか」

 

「やっぱり、そうだよなぁ。

友達がある言うてたから」

 

俺母「そなら、今度

お参り行かんとなぁ。

 

・・・あの山の怖い話、

しちゃろか。

 

おまつりって話じゃ。

 

知らんじゃろ」

 

ビクッと、俺は肩を叩く手を

止めてしまった。

 

おまつりって・・・

 

あの、おまつりか?

 

俺母「ちょっと、

ちゃんと肩叩きぃよ」

 

「あぁ、ゴメン。

 

どんな話じゃ、

おまつりって。

 

縁日か何かか」

 

俺母「縁日のどこが怖いんじゃ。

 

かあちゃんがな、

 

かあちゃんのひいじいちゃんに

聞いた話じゃ。

 

だから、お前にとっては、

ひいひいじいちゃんじゃ」

 

平静を装って肩を叩いていたが、

心臓はバクバク鳴っていた。

 

神社は知らんのに、

 

あの神社にあった『おまつり』は

知ってるのか?

 

「どんな話じゃ」

 

俺母「これな、

ホントに怖いから。

 

お前は臆病だし、

 

まだまだチビッコ思ってたから

話したことなかったけど、

 

来年はお前も

もう中学生じゃ。

 

怖がらずに最後まで聞いてみ。

 

あ、肩、もういいよ」

 

そう言われて、

 

俺はちゃぶ台を挟んで、

かあちゃんの対面に座り直した。

 

自分がその時どんな顔してるか

わからなかった。

 

いつものかあちゃんなら、

 

俺が怖がってるのに

気付いただろうが、

 

その時は都合よく

酔っぱらってたから、

 

話を聞くことができた。

 

俺母「最初に言うとくけど、

この話はかなりエグイぞ。

 

○○(俺の弟)にしたら

大泣き確実じゃ。

 

だから、お前も面白がって

この話はすんなよ」

 

ここからが、

かあちゃんの話の本題。

 

話し言葉だと

伝わりにくいと思うから、

 

改めて文章で書き直す。

 

(続く)田舎村の風習 7/8へ

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