気に入って契約したアパート

八王子に住んでた時の出来事。

 

俺は大学に通うため千葉から上京して

一人暮らしをしてたんだが、

 

市内で3回もアパートを変えてる。

 

その2回目に引っ越した、

アパートでの出来事。

 

俺には同棲してた彼女がいた。

 

2回目に引っ越したアパートは、

元々古い木造アパートを最近になって

リフォームしたものだった。

 

部屋の構造が実に個性的で、

気に入って契約したんだ。

 

どんな構造だったかというと、

 

俺の部屋は2階の角部屋で、

階段が直接俺の部屋のドアだけに

直結している、

 

言わば俺専用の階段があった。

 

その階段の脇に、車1台止められる

スペースも気に入った。

 

部屋の中はドアを開けて

右にキッチン、

 

正面にトイレ、左には階段、

その隣にはリビングの入り口。

 

階段を登ると右にドアがあり、

屋根裏部屋があるのだ。

 

俺は、この屋根裏が

めちゃくちゃ気に入った。

 

住み始めて間もなく、

異変が起こった。

 

彼女も部屋をとても気に入って、

 

ある日一緒に

部屋で酒を飲んでた時のこと。

 

リビングでテレビを見てた時、

玄関のドアが『ガチャ』と音を出した。

 

俺と彼女はすぐ気づき、

彼女はビビリMAXに入っていた。

 

「気のせいだよ、外の風だってw」

 

とは言いながら、

俺も内心はビビリMAXである。

 

その時また『ガチャ』と音がして、 

 

さすがに俺は、 

ここで音の原因を確かめに行って

 

彼女を安心させなくては

彼氏の名が廃ると思い、

 

「マジでなんだろうね?

ちょっと見て来るわ」

 

内心は泣きそうである。

 

それでドアの前に立った

その時、見た。

 

・・・見ちゃったの。

 

ガチャって音とともに、

ドアノブまで動く光景を。

 

俺はもうビビリを越えて、

 

思いっきりドアを

バンって開けたんだけど。

 

誰もいないんですよ。

もう恐怖どころじゃない。

 

俺は彼女に、

「なんかゴミが引っかかってたw」

と嘘を言って安心させたが、

 

俺は心臓はち切れそうなくらい、

パニックになってた。

 

早く忘れよう。

酒のんで忘れよう。

 

と、酒に手をかけた。

 

俺は酒に弱く、

すぐラリってしまうほうなんだが、

 

その日はなんだかおかしかった。

 

そんなに飲んでないのに

息が上がり、意識が朦朧とし、

 

目の前が黄色いフィルムを

通して見てるような、

 

まぁとにかく本能的に、

「やばい、死ぬか失神のどっちかだ」

ってとこまでなった。

 

俺は半分パニックになって彼女に

「きゅ、救急、救急車、よ、呼んく・・・」

 

救急車が到着して、

隊員の人に担がれ病院に運ばれた。

 

医師いわく、過換気症候群という、

ストレスからくる一時的な症状と言われた。

 

別に俺にはストレスはなく

納得いかなかったが、

 

その日は無事にタクシーで

帰路についた。

 

俺はヘタレなので母親に相談した。

 

余談だが、俺の親は元々霊感が強く、

俺は半分馬鹿にしていた。

 

が、今回の相談で、

親の霊感を連想させるような

言葉を投げかけられるとは、

思いもしなかった。

 

母が、

「あんたそれ、憑かれてる時もなる

症状だから気をつけなさいよ、本当に」

 

俺は内心、

いや普通に焦った。

 

俺はその日から部屋に一人でいると、

過換気症候群によくなるようになった。

 

ヘタレな俺は引っ越してばっかなのに、

早く引っ越したくてしょうがなくなった。

 

次の日から、なるべく一人で

部屋に帰らないように、

 

大学が終わったら

スロット行ったりして時間を潰してから、

 

彼女を会社まで迎えに行って、

一緒に部屋に帰る毎日だった。

 

それから1ヶ月くらいした時のこと。

 

彼女を車に乗せて、

アパートの駐車場の前まで

来た時にだった。

 

その日、その俺専用駐車場に、

人だかりが出来ていたんだ。

 

しかもみんな喪服。

お坊さん1人。

 

俺専用駐車場の真ん中に、

花束と線香。

 

俺と彼女は大パニック。

 

俺は車を端に止めて駆け寄り、

お経を読んでいるお坊さんを無視して

事情を説明してもらった。

 

お坊さんは、

「もう大丈夫ですから

心配しなくていいですよ(ニッコリ)

 

はぁ?

わけわかんねーよ!

 

その前に、

なんでこういう状況になってるのか

説明してくれと言ったら、

 

喪服を着た

50代くらいのおばさんが、

 

「うちの主人がねぇ、

ここで自殺しちゃったのよ。

ごめんねぇ迷惑かけて」

 

俺、開いた口塞がず。

 

どうやらその自殺は

俺が引っ越してくる前の出来事で、

 

俺の部屋の前の住人が、

自殺者だった。

 

俺は、

「なんでいまさらココで

こんなんやってるんですか?」

 

と聞いたら、お坊さんが、

 

「まだ成仏出来てないみたいなんだけど、

もう大丈夫ですから」

 

まだ成仏出来てないって・・・

 

もう大丈夫ですからとか言われても

俺はもうそのアパートにはいられず、

 

大家に文句言って、

すぐ引っ越したのでした。

 

ちなみに、引っ越してから

症状はピッタリ止んだ。

 

(終)

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