あの世からの誘いは夢を通じて

零細企業に勤めていたが、家業を継ぐため、やむなく退職した。
その後、その会社は倒産した。
それから10年。
あの会社の社長の夢を、何度も立て続けに見るようになった。
「帰ってきてくれ。もう一度、一緒に仕事をしよう」
そんな内容だった。
気になって連絡を取ってみると、社長は末期ガンで、余命わずかだということだった。
慌ててお見舞いに駆けつけた。
それから間もなく、その人は亡くなった。
家族の話によると、俺が戻ってきてくれることを、ずっと願っていたらしい。
亡くなる直前にも、俺に会えたことをとても喜んでいたという。
その1週間後、また夢を見た。
「一緒に来てくれよ。寂しいんだ……」
そう言いながら、手を引っ張られた。
俺は夢の中で必死にその手を振りほどこうとしたが、強く強く引っ張られ、そこで目が覚めた。
目を開けると、真冬だというのに布団から2メートルほど離れた床に倒れていた。
俺は寝相のいいほうだ。
こんなことは、初めてだった。
胸が苦しかった。
あのとき、もし気を許していたら、きっと俺は死んでいたんだろう。
(終)
AIによる概要
この話が伝えたいことは、「人の想いは、たとえ死を越えても残り続けることがある」ということです。
語り手は、やむを得ず仕事を辞めたものの、心のどこかに後ろめたさや未練を抱えていました。一方、社長もまた、語り手を強く信頼し、戻ってきてほしいとずっと願い続けていた。二人の間には断ち切れない絆のようなものがあり、その強い想いが社長の死後にも残り、夢を通して語り手に呼びかけ続けます。
そして、夢の中での「一緒に来てくれ」という言葉と、実際に身体が布団から遠く離れた場所に倒れていたという現象からは、「想い」が現実に影響を及ぼすほどの力を持っているという暗示が感じられます。もし気を許していたら、自分もあの世に引き込まれていたかもしれないという恐怖と共に、故人の寂しさや執着が切実に伝わってきます。
この体験談は、単に怖い話というだけでなく、人と人との深い関係性や、心の中に残る想いの重さ、そして死者とのつながりのあり方についても静かに問いかけているのです。

































