お祭り好きの幽霊(後編)
そんなこんなで花火大会は終わり、
俺も友達と別れて帰宅した。幽霊連れで。
幽霊
「あー楽しかったぁ!」
俺
「・・・楽しませたら離れるとか言ってなかったか?」
幽霊
「まだちょっと足りないもん」
意地の悪そうな笑顔で
こちらの顔を覗き込む幽霊。
俺
「で、何すりゃいいわけ?」
幽霊
「うーんとねぇ・・・」
わずかに残されていた小遣いの使い道は、
アイスクリームとファミリー用の花火セット。
俺
「・・・なぜ、花火を見た後で花火をしたがる・・・」
幽霊
「いいじゃない、やりたいんだもん」
ほらほらと急かされて、しぶしぶ河川敷の広場に向かい、
命じられるままに花火をする。
時々通りかかる人たちには、
深夜に1人でブツブツ言いながら花火をする
寂しい人に見えてるんだろうな・・・。
俺
「ほら、これで最後だ」
派手目なのから使っていくと、
最後に残る線香花火の束。
うち1つを手に取り火をつけた。
それまでは手持ち花火を振り回せだの、
まとめて火をつけろだのと騒いでいた幽霊だったが、
どういう風の吹き回しか、
俺の隣におとなしくしゃがみこんだ。
2人で静かに小さくはじける花火を見つめる。
幽霊
「なんだかあっという間だったね」
ポツリとつぶやく幽霊。
俺
「幽霊やってどのくらい?」
幽霊
「・・・今年が初めて」
嘘かホントかわからないが、
その横顔はとても寂しそうに見えた。
俺
「そうか・・・。すまん」
幽霊
「信じたの?バカねー」
俺
「くっ・・・」
コイツは絶対悪霊の素質がある。
ムカついたせいだろうか、
細い軸の先でチリチリとはじいてた小さな玉がぽとりと落ちた。
俺
「おっと、じゃ次のに火をつけるぞ」
手元の花火に集中したその瞬間。
ふわりと幽霊が抱きついてきて。
俺
「・・・な」
幽霊
「お礼・・・、かな」
頬に軽く押し付けられた唇は、
少し冷たく感じた。
幽霊
「じゃ、ね。バイバイ」
俺
「おい、・・・」
背を向けて歩き出した幽霊は、
こちらを振り返ることなく、
空気に溶けるように滲んで消えた。
手に握ったままの火のついた線香花火は、
またもや燃え尽きる前にぽとりと落ちた。
(終)
・・・?
幽霊
「お宮の夏祭りに行こー」
俺
「いやちょっと待て」
そろそろ晩夏にさしかかる頃、
西日の差し込む俺の部屋。
うだるような暑さにめげず、
昼寝をしていた俺。
暑さが急に和らいだと思ったら、
聞き覚えのある声が響いてきた。
慌てて飛び起き・・・、ようとしたものの、
幽霊が俺の腹に馬乗りに座り込んでいたので無理だったが。
幽霊
「お祭りだよ、お祭り!ほら、隣町のお宮祭り」
ワクワク顔ではしゃいでる幽霊。
俺
「お祭りがあるのは知っている。
俺が聞きたいのはお前がここにいる理由だ」
幽霊
「お祭りイベントのあるところには、
私はいつでも現れるのよ!」
俺
「答えになってない」
幽霊
「いいじゃない。あなたと一緒だと楽し・・・
我がまま放題できるから楽しいの、私が」
悪霊だ。
コイツは絶対悪霊だ。
まあ、今までの悪霊に比べれば、
比較的、嫌な感じがしないと言うか。
格好の餌食として目を付けられたかも知れないと、
思い至っても、ちょっと心が浮かれているのは確かだ。
(終)
ナニコレ?
何を読まされてんだかww