呪いのコンパクト 2/2

Bがコンパクトを手放してしまった・・・と。

 

Hにも連絡したら、

あのひょうひょうとしたHが

あわくってたそうです。

 

俺も巻き込まれで付き合い、

3人で次の所有者を訪ねました。

 

AがBに聞いたところだと、

友人(学生時代のではないため、

俺達とは面識なし)に見せたら、

 

凄く良い品だと言われ羨ましがられ、

ちょっとだけ貸して欲しいと言うから

貸したら返してくれない、と。

 

B「携帯に連絡してもメールしても、

返事がないの」

 

と言った時のAの表情を誤解したようで、

「貰い物なのに申し訳ない」と、

Bは凹んでいたそうです。

 

Aが苦労してBから聞き出した名前、

その他の情報を頼りに、

 

俺達がB友人宅を探し当てた時、

B友人は離婚前提の別居だとかで、

家には居ませんでした。

 

ご主人だけ居て、

俺達の目的が奥さんに貸した

コンパクトだと言うと、

 

出て来て暗い顔で言葉少なく、

そのモノを渡してくれました。

 

その時、両足首に包帯を巻いていた

彼の右袖口からちらりと、

 

手首より少しだけ上辺りに、

何か見えました。

 

モノを引き取りB友人宅を出て、

俺はAとHに確認しました。

 

・・・見間違いじゃなかったです。

 

ヒトの歯型だった、

と二人とも言いました。

 

その後の二人の会話は、

以下の通り。

 

A「奥さんの歯型だよね、アレ」

 

H「だろうね。・・・やっちゃったねえ」

 

さすがのHが、

真っ青に青ざめていました。

 

A「Hさんのせいだよ」

 

H「うん、俺のせい・・・。

呪いのコンパクトだよって言っといたから、

Bさん離さないと思ってた」

 

A「勝手なこと言わないで下さい。

大体、高価なものなら

泥棒に遭うことだって考えられるでしょ。

何でそんないい加減なことするんですか」

 

Aが物凄く刺々しい口調で言って、

Hが黙り込み、気まずい気分で、

俺らはHと別れました。

 

例のコンパクトは、

Hが持ち帰りました。

 

最もA曰く、もうコンパクトには

何もないそうでした。

 

Bが愛用していた数ヶ月で、

削り取られ磨り減り続けたモノの 

最後っ屁と言うか断末魔と言うか、

 

そういうものをB友人は、

受けてしまったのだと思う、と。

 

その後、俺が6月にHと飲んだ時に

(Iの件以降、何となく付き合いしてる)

聞いたところでは、

 

まっさらになった例のコンパクトを

売り払った金に色をつけて、

例のB友人である女性に送金したそうです。

 

送金先は自腹で調べたそうで、

いつも能天気に見えるコイツでも、

あの一件は堪えたんだなと思いました。

 

また最後になりますが、

そのコンパクトに憑いてたモノの

正体について。

 

Bのコンパクト紛失以前、

AがHを呼び出した際に

少し聞きました。

 

俺にはよくわからなかった話ですが、

Hが『みた』ところでは、

 

『4つ足の哺乳類に昆虫の羽根がある』

生き物が、しがみ付いてたとか。

 

Aには姿は見えなかったが(能力の差か、

Bが居たことによる影響かは解らないと)

ブンブンと背筋の寒い羽音が絡まり付いてたと。

 

その中では一人だけみえない俺が、

「哺乳類に虫の羽って何?

異次元の生き物とか?」

と聞いたら、

 

AとHがまるで狙ったようなタイミングで、

バッと目を逸らしたのが印象的でした。

 

Aは黙ってましたが、

Hはハハハとわざとらしく笑い、

 

H「人間が、恨みとか呪いだけで、

精神のカタチまで捻じ曲げて

あんなモノになれるってのが、

怖いよね。本当に・・」

 

と言いました。

 

正直、俺はグロいものを見る力が

無くて良かったです。

 

曖昧な部分が多いですが・・・

 

(終)

シリーズ続編→模倣 1/3へ

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